top of page

30年間、誰も見つけられなかった雨漏りの原因を突き止めた時の話|雨漏りは本当に難しく、そして恐ろしい

執筆者の写真: 坪井 真行
坪井 真行
7月9日
読了時間: 9分

更新日:9月17日




真HMSは、大府市・名古屋市周辺で、木造住宅の既存住宅状況調査・住宅診断・ホームインスペクション・リフォーム前相談を行う、現役大工×二級建築士の木造住宅専門の判断屋です。


今回は、私がまだ会社員だった頃に経験した、今でも強く記憶に残っている雨漏りの話です。



雨漏りは本当に難しく、そして恐ろしい。



そのことを強く感じた現場でした。



「実は、この家……30年間雨漏りしているんです」



あるリフォーム工事中のことです。


お客様から、工事範囲外の場所について相談を受けました。


「実は、二階で雨漏りしているんです。」


聞くと、その雨漏りは約30年前、増築した時からずっと続いていたそうです。


もちろん、お客様も何もしてこなかったわけではありません。


防水工事をやり直した。


外壁も手を入れた。


母屋の瓦も触った。


それでも雨漏りは止まらなかった。


正確な金額は分かりません。


しかし、それぞれの工事費を考えると、この30年間で相当な費用を掛けてきたことは容易に想像できました。


それでも直らない。


最後には、



「増築だから仕方ない。」



そう諦めてしまっていたのです。


何度も繰り返す工事で失われていたのは、お金だけではありません。


お客様の中で、


「この家は、もう直らない。」


という諦めが積み重なっていました。



増築部分との取り合いがある木造住宅の外観
一見すると普通の木造住宅でも、増築部分との取り合いには雨漏りの原因が隠れていることがあります。

一見すると普通の木造住宅でも、増築部分の取り合いには雨漏りの原因が隠れていることがあります。


写真だけで断定はできませんが、建物の形状や取り合いの納まりを確認することが、判断の第一歩になります。



天井を開けても、原因は見えませんでした


雨漏りしていたのは、増築部分との取り合い付近の廊下でした。


天井を開けて中を確認しました。


しかし、梁が重なっており、奥まで入ることができません。


手を入れて写真を撮っても、何が写っているのか分からない。


つまり、構造が見えない。


原因を断定できる状態ではありませんでした。


写真だけでは分からない。


天井を開けても分からない。


だからこそ、現地で建物の形、増築の仕方、雨の出方、過去の工事履歴を合わせて考える必要がありました。


そこで私が着目したのが、もう一つの違和感でした。



木造住宅の小屋裏で梁が重なり奥の納まりを確認できない内部イメージ
梁や構造材が重なる小屋裏では、天井を開けても奥の納まりを直接確認できないことがあります。


気になったのは「雨が降って2日後に漏れる」こと



最初は、私も防水や笠木を疑いました。


ただ、一つだけ強い違和感がありました。


雨が降ってすぐ漏れない。


お客様の話では、雨が降ってから2日後くらいにポタポタ落ちてくる。


この時間差が、ずっと引っかかりました。


すぐに漏れるなら、比較的近い場所から入っている可能性を考えます。


しかし、2日後に落ちてくるなら、雨水がどこかで溜まっている、または建物の中を時間をかけて移動している可能性があります。


雨漏りは、室内に出ている場所の真上が原因とは限りません。


水は横にも走ります。


板金の中、壁の中、取り合いの中を伝って、思わぬ場所から出てくることがあります。


この「2日後」という時間差が、原因を考える大きな手掛かりになりました。



半年前に経験した、別の雨漏りがヒントになった



この現場の半年前、私は別の新築現場で似た現象を経験していました。


半ビルトインガレージの住宅でした。


ガレージ内に玄関があり、普通の雨ではまず濡れない場所です。


ところが、玄関前に雨染みができていました。


お客様から、


「これ、雨漏りですか?」


と聞かれ、確認に行きました。


原因は土台水切りでした。


土台水切りの出角から入った雨水が、水切り内部を横に走り、離れた入角部分で落ちていたのです。


その時は、水返しがつながっていない部分で水が落ちていました。


対応として、出角上部と水返し部分に処理を行い、そこで排水できるようにしました。


その経験があったからこそ、今回の現場でも、


「もしかすると、今回も水切りの中を横に走っているのではないか。」


そう考えることができました。


これは、図面だけでも、写真だけでも出てこない判断です。


現場で一度、水の動きを見たことがあったからこそ気づけた違和感でした。



増築部分の取り合いと水切り内部を雨水が横方向へ移動する仕組みを示した解説画像
建物の外観、見えない取り合い部分、水切り内部を雨水が横走りする考え方と処置を整理した図です。


雨水は、入った場所でそのまま落ちるとは限りません。


水切りや板金の内部を横方向へ走り、離れた場所で室内側へ落ちることがあります。



原因は防水でも瓦でもありませんでした



今回の現場で疑ったのは、オーバーハング下に回してあった水切りでした。


雨水がその水切りの水返し内部に入り込み、横方向へ走っている。


そう判断しました。


そこで、外壁の外側で水返し部分を板金ばさみで一部カットしました。


大がかりな工事ではありません。


防水を全面的にやり直したわけでもありません。


瓦を伏せ直したわけでもありません。


外壁を全部壊したわけでもありません。


行ったことだけを見れば、


「板金を一部切った。」


それだけです。


しかし大事なのは、切ったことではありません。


そこを切れば雨水の通り道を断てると判断できたことです。


30年間、さまざまな工事をしても止まらなかった雨漏り。


必要だったのは、もう一度大きな工事をすることではありませんでした。


雨水がどこから入り、どこを通り、どこへ出ているのか。


その通り道を考えることでした。



雨漏りが止まったと判断するまで、天井を閉じませんでした



雨漏りは、


「一回止まった。」


だけでは終われません。


今回の現場では、リフォーム工事中だったため、天井をすぐに復旧しませんでした。


クロス工事の直前まで天井を開けたままにして、何度も雨を経験しました。


その間、一度も漏れませんでした。


そこまで確認してから、天井を復旧しました。



今回確認した範囲では、雨漏りは止まったと判断しました。



施工した。


その場では漏れていない。


それだけで工事完了とは言い切れません。


雨の降り方、風向き、時間差、再発の有無。


今回の現場では、実際に複数回の雨を経験して再発がないことを確認したうえで、天井を復旧しました。



なぜ30年間、雨漏りの原因が見つからなかったのか



この雨漏りが30年間見つからなかった理由を、一つに断定することはできません。


ただ、今回の現場では、


増築部分の複雑な取り合いがある。


天井を開けても梁が重なって奥が見えない。


雨が降ってから約2日後に漏れる。


雨水が水切り内部を横方向へ移動していたと考えられる。


そして過去には、防水、外壁、瓦にも手を入れていました。


つまり、室内に雨が出ている場所と、実際に疑うべき場所が離れていたのです。


防水屋さんは、防水の専門家です。


瓦屋さんは、瓦の専門家です。


板金屋さんは、板金の専門家です。


塗装屋さんは、塗装の専門家です。


どの職人さんも高い技術を持っています。


だからこそ、その技術をどこへ使うべきなのかを最初に整理することが大切だと私は考えています。


今回必要だったのは、


「防水をもう一度やること」


でも、


「瓦をもう一度触ること」


でもありませんでした。



建物の形と、雨水の通り道を読むことでした。



今回の住宅判断



今回の現場で、実際に確認できたことと、確認できなかったことを整理します。



確認した内容


・増築直後から約30年間続いていた雨漏り


・過去に防水、外壁、瓦の工事を行っていたこと


・雨漏り位置が増築部の取り合い付近だったこと


・雨が降ってから約2日後に漏れてくること


・天井を開けても梁が重なり、奥の納まりが確認できなかったこと



確認できなかった内容


・壁内の正確な水の通り道


・水切り内部のすべての納まり


・過去工事の詳細な施工内容


・雨水が入った最初の地点の完全な断定



判断理由


・防水は数年前に施工済みだった


・雨漏りに時間差があった


・過去の類似事例で、水切り内部を雨水が横走りした経験があった


・建物の形状と増築部の取り合いから、水切り内部の横走りを疑う余地があった


・外壁外で水返しを加工することで、水の通り道を断てる可能性があった



実際に行った対応


・オーバーハング下の水切りの水返しを一部加工


・雨水の横走りルートを断つ処置


・天井を開けたまま複数回の雨を経験


・再発がないことを確認してから天井を復旧



工事完了と判断した根拠


・施工直後だけで判断しなかった


・クロス工事直前まで天井を開けて確認した


・複数回の雨で漏水が再発しなかった


・今回確認した範囲では、雨漏りが止まったと判断できた


ここは大事なので、あえて「原因を完全に断定した」とは書きません。


確認できなかった部分はあります。


そのうえで仮説を立て、処置を行い、その後の雨で再発しないことを確認した。


そこまでが、この現場で実際に確認できた事実です。



雨漏りは、穴を探す仕事ではありません



雨漏りというと、


「どこに穴があるのか」


と考えがちです。


しかし、今回の現場ではそうではありませんでした。


雨水は、入った場所でそのまま落ちるとは限りません。


板金の中を走る。


壁の中を伝う。


梁や下地に当たって移動する。


時間差で落ちてくる。


だから私は、雨漏りを見る時に、室内で水が出ている場所だけを見て原因を決めません。



入口だけではなく、雨水がどこを通って、なぜそこへ出てきたのかを考えます。



実際に雨漏りの原因を考える時の「出口・通り道・侵入口」という考え方は、こちらの記事で詳しく整理しています。

雨漏りの出口・通り道・侵入口から原因を考える真HMSの記事案内画像リンクバナー


まとめ|30年間の雨漏りから分かったこと



今回の現場で止めたのは、雨漏りだけではありません。


30年間続いていた、



「増築だから仕方ない。」



という諦めも、止めたかったのです。


防水を直しても止まらない。


外壁を直しても止まらない。


瓦を触っても止まらない。


だからといって、


「次はどこを工事するか」から考える必要はありません。


今回の現場で必要だったのは、雨が降ってから漏れるまでの時間、建物の形、増築部分の取り合い、過去の工事履歴、そして過去に経験した別の雨漏り。


それらを一つずつ組み合わせて、雨水の通り道を考えることでした。



雨漏り修理をすぐに決めるべきか、原因が分からない時に何から考えるべきかについては、雨漏りの王記事で整理しています。

雨漏り修理がすぐ必要か原因と順番から判断する真HMSの解説記事案内バナー



その工事、本当に必要ですか?



もし、


何度修理しても雨漏りが止まらない。


原因が分からないまま、次の工事を勧められている。


どこを直せばいいのか分からない。



そんな状態なら、工事を決める前に一度、建物全体の判断材料を整理してみてください。


写真や資料、過去の工事内容が分かるものがあれば、LINEで送ってください。


写真だけでは判断できない場合もあります。


その場合は、なぜ現地確認が必要なのかも含めてお伝えします。



真HMSでは、調査や相談で確認した内容を、お客様の暮らし、ご希望、ご予算に合わせて整理します。


対応が必要な場合には、原因、対応範囲、順序、必要な専門性を整理し、本当に必要な工事をご提案します。


お客様が納得して工事を希望される場合は、必要な専門職の選定、施工管理、工事完了まで対応します。



相談・調査・必要な場合の修繕工事については、サービスページでご確認いただけます。

既存住宅状況調査・住まいの相談・住宅修繕工事の3つのサービスを案内する真HMSのバナー



建物の状態や気になる箇所を写真やメッセージで真HMSにLINE相談できる案内バナー


コメント

5つ星のうち0と評価されています。
まだ評価がありません

評価を追加
LINEで住宅診断・修繕工事について相談する
bottom of page