30年間、誰も見つけられなかった雨漏りの原因を突き止めた時の話雨漏りは本当に難しく、そして恐ろしい
- 坪井 真行

- 7月9日
- 読了時間: 11分
真HMSは、大府市・名古屋市周辺で、木造住宅の既存住宅状況調査・住宅診断・ホームインスペクション・リフォーム前相談を行う、現役大工×二級建築士の木造住宅専門の判断屋です。
「その工事、本当に必要ですか?」
この視点で、建物の状態を確認し、お客様のご希望やご予算を踏まえながら、本当に必要な工事を見極めています。必要な工事がある場合には、専門職の選定、施工管理、工事完了まで責任を持って対応します。
今回は、私がまだ会社員だった頃に経験した、今でも強く記憶に残っている雨漏りの話です。
雨漏りは本当に難しく、そして恐ろしい。
そのことを強く感じた現場でした。
「実は、この家……30年間雨漏りしているんです」
あるリフォーム工事中のことです。
お客様から、工事範囲外の場所について相談を受けました。
「実は、二階で雨漏りしているんです。」
聞くと、その雨漏りは約30年前、増築した時からずっと続いていたそうです。
もちろん、お客様も何もしてこなかったわけではありません。
防水工事をやり直した。
外壁も手を入れた。
母屋の瓦も触った。
それでも雨漏りは止まらなかった。
正確な金額は分かりません。
しかし、それぞれの工事費を考えると、この30年間で相当な費用を掛けてきたことは容易に想像できました。
それでも直らない。
最後には、
「増築だから仕方ない。」
そう諦めてしまっていたのです。
何度も繰り返す工事で失われていたのは、お金だけではありません。
お客様の中で、
「この家は、もう直らない。」
という諦めが積み重なっていました。

天井を開けても、原因は見えなかった
雨漏りしていたのは、増築部分との取り合い付近の廊下でした。
天井を開けて中を確認しました。
しかし、梁が重なっており、奥まで入ることができません。
手を入れて写真を撮っても、何が写っているのか分からない。
つまり、構造が見えない。
原因を断定できる状態ではありませんでした。
写真だけでは分からない。
天井を開けても分からない。
だからこそ、現地で建物の形、増築の仕方、雨の出方、過去の工事履歴を合わせて考える必要がありました。
そこで私が着目したのが、もう一つの違和感でした。
気になったのは「雨が降って2日後に漏れる」こと
最初は、私も防水や笠木を疑いました。
ただ、一つだけ強い違和感がありました。
雨が降ってすぐ漏れない。
お客様の話では、雨が降ってから2日後くらいにポタポタ落ちてくる。
この時間差が、ずっと引っかかりました。
すぐに漏れるなら、比較的近い場所から入っている可能性を考えます。
しかし、2日後に落ちてくるなら、雨水がどこかで溜まっている、または建物の中を時間をかけて移動している可能性があります。
雨漏りは、室内に出ている場所の真上が原因とは限りません。
水は横にも走ります。
板金の中、壁の中、取り合いの中を伝って、思わぬ場所から出てくることがあります。

半年前に経験した、別の雨漏りがヒントになった
この現場の半年前、私は別の新築現場で似た現象を経験していました。
半ビルトインガレージの住宅でした。
ガレージ内に玄関があり、普通の雨ではまず濡れない場所です。
ところが、玄関前に雨染みができていました。
お客様から、
「これ、雨漏りですか?」
と聞かれ、確認に行きました。
原因は土台水切りでした。
土台水切りの出角から入った雨水が、水切り内部を横に走り、離れた入角部分で落ちていたのです。
その時は、水返しがつながっていない部分で水が落ちていました。
対応として、出角上部と水返し部分に処理を行い、そこで排水できるようにしました。
その経験があったからこそ、今回の現場でも、
「もしかすると、今回も水切りの中を横に走っているのではないか。」
そう考えることができました。
これは、図面だけでも、写真だけでも出てこない判断です。
現場で一度、水の動きを見たことがあったからこそ気づけた違和感でした。

原因は防水でも瓦でもありませんでした
今回の現場で疑ったのは、オーバーハング下に回してあった水切りでした。
雨水がその水切りの水返し内部に入り込み、横方向へ走っている。
そう判断しました。
そこで、外壁の外側で水返し部分を板金ばさみで一部カットしました。
大がかりな工事ではありません。
防水を全面的にやり直したわけでもありません。
瓦を伏せ直したわけでもありません。
外壁を全部壊したわけでもありません。
行ったことだけを見れば、
「板金を一部切った。」
それだけです。
しかし大事なのは、切ったことではありません。
そこを切れば雨水の通り道を断てると判断できたことです。
雨漏り修理は、作業そのものより前に、どこを触るべきかを判断することが重要です。
工事完了と判断した根拠
雨漏りは、
「一回止まった。」
だけでは終われません。
今回の現場では、リフォーム工事中だったため、天井をすぐに復旧しませんでした。
クロス工事の直前まで天井を開けたままにして、何度も雨を経験しました。
その間、一度も漏れませんでした。
そこまで確認してから、天井を復旧しました。
今回確認した範囲では、雨漏りは止まったと判断しました。
雨漏り工事では、この確認が非常に大切です。
工事をした。
その場では漏れていない。
それだけでは、工事完了とは言い切れません。
雨の降り方、風向き、時間差、再発の有無を確認して初めて、一定の判断ができます。
なぜ30年間、誰も見つけられなかったのか
大府市や名古屋市周辺の古くからある住宅地では、敷地や暮らし方に合わせて、増改築を重ねてきた木造住宅も少なくありません。
増築部分がある家では、既存部分と新しい部分の取り合いが増えます。
この取り合いが増えるほど、雨漏りの因果関係は複雑になります。
防水屋さんは、防水の専門家です。
瓦屋さんは、瓦の専門家です。
板金屋さんは、板金の専門家です。
塗装屋さんは、塗装の専門家です。
どの職人さんも高い技術を持っています。
私は、そこを否定したいわけではありません。
ただし、原因が分からない雨漏りでは、最初に必要なのは「どの工事をするか」ではありません。
まず必要なのは、
建物全体として、どこを疑うべきかを判断することです。
防水屋さんに頼めば、防水を疑います。
瓦屋さんに頼めば、瓦を疑います。
板金屋さんに頼めば、板金を疑います。
それは自然なことです。
それぞれが自分の専門分野から原因を探すからです。
しかし、今回のように、増築の仕方、築年数、過去の工事履歴、雨漏りの時間差、水切りの納まりが複雑に絡んでいる場合、最初から一つの工種だけで見てしまうと、原因にたどり着けないことがあります。
必要だったのは、
「防水をもう一度やること」
ではありませんでした。
「瓦をもう一度触ること」
でもありませんでした。
建物の構造と雨水の通り道を読むことでした。
専門職を正しい場所へ導くことも、住宅判断の一部です
今回の現場では、私自身が板金ばさみで処置を行いました。
ただ、現在の真HMSの考え方で大切にしているのは、自分で何でも施工することではありません。
必要なのは、
どの専門職に、どこを、どの順番で、どこまで対応してもらうべきかを判断することです。
原因が防水なら、防水職人が必要です。
原因が瓦なら、瓦職人が必要です。
原因が板金なら、板金職人が必要です。
しかし、その前に、
「本当にその専門職が必要なのか」
「どの納まりを直すべきなのか」
「工事完了後に何を確認すべきなのか」
を整理しなければいけません。
職人の高い技術を、正しい場所へ集中させる。
そのために、建物全体を見て判断し、必要な専門職を選定し、施工管理を行い、工事完了まで確認する。
それが、真HMSが考える住宅判断です。
今回の住宅判断
今回の現場を、住宅判断として整理すると次のようになります。
確認した内容
・増築直後から約30年間続いていた雨漏り
・過去に防水、外壁、瓦の工事を行っていたこと
・雨漏り位置が増築部の取り合い付近だったこと
・雨が降ってから約2日後に漏れてくること
・天井を開けても梁が重なり、奥の納まりが確認できなかったこと
確認できなかった内容
・壁内の正確な水の通り道
・水切り内部のすべての納まり
・過去工事の詳細な施工内容
・雨水が入った最初の地点の完全な断定
判断理由
・防水は数年前に施工済みだった
・雨漏りに時間差があった
・過去の類似事例で、水切り内部を雨水が横走りした経験があった
・建物の形状と増築部の取り合いから、水切り内部の横走りを疑う余地があった
・外壁外で水返しを加工することで、水の通り道を断てる可能性があった
実際に行った対応
・オーバーハング下の水切りの水返しを一部加工
・雨水の横走りルートを断つ処置
・天井を開けたまま複数回の雨を経験
・再発がないことを確認してから天井を復旧
工事完了と判断した根拠
・施工直後だけで判断しなかった
・クロス工事直前まで天井を開けて確認した
・複数回の雨で漏水が再発しなかった
・今回確認した範囲では、雨漏りが止まったと判断できた
雨漏りは、穴を探す仕事ではありません
雨漏りというと、
「どこに穴があるのか」
と考えがちです。
しかし実際の現場では、それだけでは足りません。
雨水は、入った場所でそのまま落ちるとは限りません。
板金の中を走る。
壁の中を伝う。
梁や下地に当たって移動する。
時間差で落ちてくる。
だから雨漏りは、穴を探す仕事ではありません。
雨水の通り道を読む仕事です。
そして、その通り道を読むためには、屋根だけ、外壁だけ、防水だけを見るのではなく、建物全体の構造を理解する必要があります。
雨漏りで迷った時に、先に読んでほしい記事
実際に雨漏りに直面した時、何を疑い、どの順番で考えるべきか。真HMSの判断の考え方を、以下の記事でさらに整理しています。
今回のような「納まり」「水の流れ」「完成後に見えなくなる部分」の判断には、
大工としての現場経験が大きく関わります。
工事をするかどうか、誰に頼むか、どの順番で考えるかを整理したい方はこちら
まとめ
今回の現場で止めたのは、雨漏りだけではありません。
30年間続いていた、
「増築だから仕方ない。」
という諦めも、止めたかったのです。
原因を間違えたまま工事を続けると、何十万円、時には何百万円という費用を掛けても雨漏りは止まらないことがあります。
大切なのは、最初から工事を決めることではありません。
まず、建物の状態を確認すること。
増築の仕方、築年数、過去の修繕履歴、雨水の動き、生活への影響を整理すること。
そして、必要な工事と、今は行わない工事を分けることです。
真HMSが目指しているのは、原因不明のまま工事を繰り返す状態を減らすことです。
大府市・名古屋市周辺で、木造住宅の雨漏りやリフォーム前の不安がある場合は、工事を決める前に、まず建物全体の判断材料を整理してください。
その工事、本当に必要ですか?
雨漏りは、屋根だけを見ても答えが出るとは限りません。
防水をやり直せば必ず止まるとも限りません。
瓦を直せば解決するとも限りません。
もし原因が分からない雨漏りでお困りでしたら、そのまま工事を決める前に、一度立ち止まってみてください。
写真や資料、過去の工事内容が分かるものがあれば、LINEで送ってください。
写真だけでは判断できない場合もあります。
その場合は、なぜ現地確認が必要なのかも含めてお伝えします。
真HMSでは、調査や相談で確認した不具合を、お客様の暮らし、ご希望、ご予算に合わせて、短期対応・中長期対応・現時点では工事不要へ整理します。
対応が必要な場合には、原因、対応範囲、順序、必要な専門性を整理し、本当に必要な工事をご提案します。
お客様が納得して工事を希望される場合は、必要な専門職の選定、施工管理、工事完了まで責任を持って対応します。
リフォームの前にやるべきことは、壊す前に判断材料を整理することです。
既存住宅状況調査・住宅診断・ホームインスペクション・リフォーム前相談については、
こちらのページで詳しく整理しています。
「ブログを見ました。」
その一言からで大丈夫です。
このまま工事を決めますか。
それとも、まだ選べる今のうちに、判断材料を整理しますか?





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