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「断熱等級6なのに暑い」から考える|断熱性能を数字だけで判断できない理由【大府市・名古屋市】

執筆者の写真: 坪井 真行
坪井 真行
7月28日
読了時間: 9分

更新日:9月30日



先日、SNSでこんな投稿を見かけました。


「断熱等級6の住宅なのに、夏になると家の中が暑い」


サーモカメラで確認すると、

壁と天井の取り合い付近が赤く映っているため、

熱橋や施工不良を疑っているという内容でした。

私は、その住宅を実際に確認していません。


設計図。

断熱計算書。

気密測定結果。

施工状態。

実際の日射条件や空調の使い方。


どれも確認していないので、

原因が熱橋なのか、断熱欠損なのか、施工不良なのかを判断することはできません。


ただ、この投稿を見て改めて思ったことがあります。

断熱等級。

UA値。

C値。

サーモカメラ。

断熱材の厚さ。


どれも住宅性能を考える大切な材料です。

でも、



一つの数字や、一枚の画像だけで「この家は暑い」「施工不良だ」と結論を出すことはできません。



まず知ってほしいのは、

断熱材が何をしているのか。

そして、


住宅の快適さは、断熱材だけで決まるものではない。

ということです。



結論|断熱性能は「断熱材だけ」では決まりません



高気密・高断熱住宅と聞くと、

「夏は涼しく、冬は暖かい家」

というイメージを持つと思います。

この表現自体が間違っているわけではありません。

ただし、


断熱材そのものが、家を冷やしたり暖めたりしているわけではありません。


断熱材は、

冷却材でもありません。

ホッカイロでもありません。

室内と屋外の間で、



熱が移動する速度を遅くするための材料です。



冬なら、

暖房で暖めた熱を外へ逃がしにくくする。

夏なら、

屋外から室内へ熱が伝わるのを遅らせる。

だから断熱性能を高めることには、大きな意味があります。


でも、

窓から強い日射が入り続ければ、

室内には熱が入ります。

人からも熱は出ます。

家電からも熱は出ます。

料理をすれば熱が出ます。


そして一度室内へ入った熱は、

高気密・高断熱住宅ほど自然には逃げにくくなります。

つまり、


断熱性能が高いことと、何もしなくても一年中快適であることは同じではありません。



木造住宅の天井に施工されたグラスウール断熱材
天井へ施工したグラスウール断熱材。断熱材は家を冷やしたり暖めたりするものではなく、室内外で熱が移動する速度を遅らせる材料です。


「家が暑い」なら、まず暑さの入り方を整理する


家が暑い。

だから断熱材が足りない。

すぐ断熱工事をする。

私は、この順番では考えません。


まず確認したいのは、

どこから熱が入っているのか。

です。


特に夏は、窓から入る日射の影響を無視できません。

南面。

西面。

大きな窓。

庇の有無。

外側で日射を遮れているか。

カーテンだけで対応しているか。


同じ断熱性能の住宅でも、

こうした条件によって室内環境は変わります。

さらに、

何時ごろから暑くなるのか。

どの部屋が暑いのか。

家全体なのか、一部だけなのか。

エアコンをいつから動かしているのか。

換気や窓開けをどうしているのか。

こうしたことも確認します。



「暑い」という症状だけでは、まだ原因は決まりません。



私の自宅も、高気密・高断熱で建てています



私は自宅を建てる時、

高気密・高断熱をかなり意識して設計・施工しました。

現在、築11年です。


建築当時の断熱性能は、

現在でいう断熱等級4程度です。

地域区分についても、

当時の基準で東北地方の比較的温暖な地域に近い条件を採用して設計しました。


リビングには吹き抜けがあります。

それでも普段の空調は、


14畳用エアコンを中心に使っています。


各居室のエアコンは、

就寝時に軽く動かす程度です。

私は自分で建てた家に11年間住んできました。


見た目や設備の中には、

「住んでみたら、そこまで重要じゃなかったな」

と思うものもあります。

でも、

高気密・高断熱については違います。


家を建てて良かったと思う部分の中でも、毎日の暮らしで実感が大きいものの一つです。


だから私は、

高気密・高断熱を否定したいわけではありません。

むしろ逆です。

良いものだからこそ、


数字だけで語らず、何によってその性能が成立しているのかまで見てほしい。

と思っています。



計算上の性能と、実際の建物は同じではありません




自宅には、

建築時の断熱計算書と気密測定報告書が残っています。

そして完成後には、

実際に気密測定を行いました。


住宅完成後の気密測定結果が記載された報告書
自宅完成後に行った気密測定では、相当隙間面積C値0.4㎠/㎡という結果を確認しています。計算上の性能だけでなく、実際の建物で確認した一次情報です。


UA値は、

設計上の断熱性能を考える大切な数字です。

でも、

計算書に良い数字が書かれていれば、

自動的にその性能の家が完成するわけではありません。


断熱材を、

どこへ入れるのか。

どの厚さで入れるのか。

隙間なく納められるのか。

構造材とどう取り合うのか。

金物と干渉しないのか。

配線はどう通すのか。

気密層をどこで連続させるのか。



最後は、現場でつくらなければなりません。



断熱材は「余った隙間へ詰める材料」ではありません



私の自宅では、

グラスウール180mmを無理なく納められるよう、

小屋組や天井高さを設計段階から考えていました。


構造金物についても、

羽子板ボルトによって断熱材を大きく欠き込まなくて済むよう、

箱彫りで納める方法を使っています。


これは、

「断熱材を入れる」

という作業だけを考えていたわけではありません。

構造。

断熱。

気密。

下地。

金物。

配線。

その後の仕上げ。


全部が現場ではつながっているからです。


木造住宅の室内で施工された断熱材と気密層
断熱材と気密層を施工した自宅建築時の現場。断熱性能は材料の商品名や計算値だけではなく、構造や下地、配線との取り合いまで考えて施工して初めて建物になります。


断熱材は、

現場で余った隙間へ詰め込めばいい材料ではありません。

必要な厚みを確保できること。

無理なく施工できること。

気密層を連続させられること。

他の部材と干渉しないこと。


そこまで設計と施工がつながって、

初めて計画した性能へ近づきます。

だから私は、


断熱性能を見る時に、数字だけではなく「現場でどう納まっているか」も見ます。


施工や納まりを大工の視点から確認する意味については、こちらの記事で詳しく整理しています。


現役大工の視点で住宅の下地・納まり・雨仕舞いを判断する関連記事へのリンク


C値やUA値も「答え」ではなく判断材料です



断熱性能について調べると、

UA値。

C値。

断熱等級。

という数字がたくさん出てきます。

もちろん、どれも大切です。

でも、


数字の意味と、その数字が何を表しているのかを分けて考える必要があります。


例えばC値は、

建物の気密性能を確認するための重要な指標です。

私の自宅でも実際に測定しました。


ただ、

C値が良ければ、

日射遮蔽が不要になるわけではありません。

UA値が良ければ、

エアコンを使わなくても夏中涼しい、

という意味でもありません。


そして、

設計上の数値と、

現場で実際につくられた建物が同じ性能になるとも限りません。



数字は住宅を判断する材料であって、数字一つが住宅そのものではありません。



C値やUA値と実際の施工については、別の記事で詳しく整理しています。

気密測定の様子と「そのC値、本物ですか?」の記事タイトルを表示したブログリンク画像


サーモカメラで赤く映っても、それだけで施工不良とは決められません



今回のきっかけになったSNS投稿では、

サーモカメラの画像が判断材料になっていました。

サーモカメラは、

表面温度の違いを見るために役立つ道具です。

でも、


赤く映った=そこが原因

ではありません。


断熱材が欠けているのか。

柱や梁など構造材の影響なのか。

日射を受けた屋根や外壁の影響なのか。

室内の空調条件なのか。

周囲との温度差なのか。

そうした条件を確認する必要があります。


つまりサーモカメラは、


原因を確定する機械ではなく、次にどこを確認するか考えるための判断材料です。


画像だけを見て、

「断熱欠損です」

「施工不良です」

「ここを壊して直しましょう」

と進めるのは早いと考えています。



「暑い」から、いきなり断熱工事へ進まない



家が暑い時は、

まず症状を整理します。

いつ暑いのか。

どこが暑いのか。

どの方向から日射が入るのか。

日射遮蔽はできているのか。

空調はどう使っているのか。

換気はどうなっているのか。


それでも特定の場所だけ極端に暑い。

設計上の性能と実際の体感が大きく違う。

施工状態に疑問がある。

そうなった時に、

断熱計算書。

気密測定結果。

設計図。

施工状態。

必要に応じた現地確認。

へ進めばいいと思います。


原因を確認せずに断熱工事をしても、原因が別にあれば暑さは改善しません。


これは断熱だけの話ではありません。

住宅の不具合は、

症状からいきなり工事へ進むのではなく、



症状 → 原因 → 判断 → 必要なら工事

という順番で考えることが大切です。



高気密・高断熱だからこそ、正しく理解して使ってほしい



私は、

高気密・高断熱住宅を否定していません。

自分の家でも採用しています。

設計しました。

施工しました。

気密測定もしました。

そして11年間、

実際にそこで暮らしています。


だからこそ、

「断熱等級が高ければ絶対に暑くない」

とも、

「暑いから断熱性能が悪い」

とも考えません。


断熱。

気密。

日射。

窓。

換気。

空調。

設計。

施工。

暮らし方。


住宅の快適さは、

それらが組み合わさってつくられます。

一つだけ切り取って、

家全体を判断しない。


これは断熱性能でも同じです。



まとめ|断熱性能も「数字」ではなく住宅全体で判断する



「断熱等級6なのに暑い」

という現象があったとしても、

その一言だけでは原因は分かりません。

断熱材。

施工。

熱橋。

日射。

窓。

空調。

換気。

さまざまな可能性があります。


だから、

最初から断熱工事を決めるのではなく、

まず、


何が起きているのか。

を整理する。


次に、


どこから熱が入っているのか。

設計された性能が、現場でどうつくられているのか。

を確認する。


そして必要になった時に、

初めて工事を考える。

断熱等級も、

UA値も、

C値も、

サーモカメラも、

大切な判断材料です。




どれか一つだけで、住宅の答えにはなりません。



自宅を設計し、

実際に施工し、

性能を測定し、

11年間暮らしてきたからこそ、

私はそう考えています。


断熱性能も、数字だけではなく、設計・施工・使い方まで含めて住宅全体で判断する。


それが、真HMSの考える断熱・住環境の見方です。

家の暑さや寒さについて、

「断熱工事が必要なのか分からない」

「性能の数字は良いのに快適ではない」

「工事を提案されたけれど、本当に必要なのか確認したい」

という段階でもご相談いただけます。


現在の状態を整理し、


まず何を確認するべきなのか。

工事の前に試せることはないのか。


そこから一緒に整理します。

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