「まだ大丈夫」が一番危ない理由|塗装しても止まらなかった腐食とシロアリの現実【大府市・名古屋市】
- 坪井 真行

- 5月21日
- 読了時間: 7分
👉 その工事、本当に必要ですか?
👉 リフォームの前にやるべきこと。
「まだ大丈夫ですよ。」
住宅の相談で、非常によく聞く言葉です。
雨漏りしていない。まだ住める。とりあえず塗装しておけば問題ない。そう考えて、工事を進めてしまうケースも少なくありません。
しかし、実際の現場を数多く見てきた大工の目から言わせれば、この「まだ大丈夫」という言葉ほど危険なものはありません。なぜなら、表面上は問題なく見えていても、建物の内部では静かに腐朽や劣化が進行しているケースが非常に多いからです。
今回は、実際の現場写真をもとに、
・なぜ「まだ大丈夫」が危険なのか
・なぜ塗装だけでは止まらないケースがあるのか
・なぜ住宅には“全体を見る人”が必要なのか
を、現役大工×建築士の視点で整理します。
結論
「まだ大丈夫」は、“今すぐ壊れない”だけの話かもしれません
今回の現場は、木下地の上にサイディングを施工した、アーケード形状の外部構造でした。
ただ、実際に解体して確認すると、上部に「笠木(水を逃がすための部材)」が無い構造になっていました。つまり、水を外へ逃がす設計ではなく、サイディングで蓋をし、角部分のコーキングで止水する前提の納まりだったのです。
もちろんコーキング自体は必要な材料です。しかし、本来雨仕舞いというのは「水を入れない」だけではなく、「入った水をどう逃がすか」まで含めて考える必要があります。
今回のように、水の逃げ道が無い状態で長年雨を受け続けると、内部で含水が進行し、木部腐朽やシロアリ被害へつながっていくことがあります。
しかも、この柱は単なる飾り柱ではありませんでした。
実際には、建物を支える「通し柱」を兼ねていた部分です。つまり、簡単に交換できる場所ではなく、建物全体へ影響が及ぶ重要構造部だったのです。
見た目では分からなくても、内部ではそこまで進行していました。
外壁内部では、通し柱レベルまで腐朽が進行していました

外壁を開口すると、内部の柱は大きく腐朽していました。
表面だけを見ていると、「少し傷んでいるだけ」に見えることもあります。しかし、既存住宅では外壁内部・サッシ周辺・笠木周辺・取り合い部分など、完成後に見えなくなる場所で静かに劣化が進行しているケースが少なくありません。
特に今回のような「水を抱え込む構造」は、表面だけを塗装しても根本解決にならないことがあります。
「塗装したから安心」では止まらないケースがある
実はこの建物、過去に塗替え工事も行われていました。
ただし、その工事に私は関わっていません。ご主人の知り合いの塗装業者さんへ依頼されたそうです。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。地域の付き合いや人脈で工事を頼むことは、地方ではよくある話です。
ただ、今回本当に重要だったのは、「塗装をしたかどうか」ではなく、「その時に構造的な問題まで確認されていたか」という点でした。
そもそも今回の納まりは、
・笠木が無い
・内部へ水が入りやすい
・水の逃げ道が無い
・コーキングへ過度に依存している
という状態でした。
つまり、塗装をしても、水を抱え込む構造自体が変わっていなかったのです。
その結果、見えない内部では腐朽が進行し続けていました。
内部では腐朽だけでなく、シロアリも同時進行していました

木部内部では、シロアリ被害も確認できました。
ただ、ここで重要なのは、「シロアリだけを駆除すれば終わり」ではないということです。
シロアリは、突然湧いてくるわけではありません。
多くの場合、
・長期含水
・湿気滞留
・腐朽環境
・水分を抱える構造
の結果として発生します。
つまり今回も、本当に確認すべきだったのは、「なぜシロアリが発生したのか」という根本原因でした。
本当に危ないのは、「誰も全体を見ていない状態」です
今回の現場、ご主人は地域活動もされ、人脈の広い方でした。
そのため、
・塗装は知り合い
・部分補修は別業者
・設備は別
・外構はまた別
という形で、様々な人が部分的に関わっていました。
しかし住宅は、本来すべてが繋がっています。
部分ごとに優秀な職人が入っていたとしても、「家全体をどう守るか」を中立的に整理する人がいなければ、結果的に判断がバラバラになることがあります。
今回もまさに、「部分のプロはいたが、全体を見る管理者が不在だった」ことで、長期間問題が蓄積していったケースでした。
雨は止めるのではなく、流す
本当に聞くべきなのは、「塗れば大丈夫ですか?」ではありません。
「なぜそこへ水が集まり、なぜ抜けず、なぜ腐ったのか」です。
雨仕舞いの基本は、雨を完全に止めることではありません。
水が入る前提で、どう逃がすか。どこへ流すか。どこで滞留させないか。その構造を作ることです。
今回のように、コーキングだけへ過度に依存した納まりでは、時間経過とともに内部へ水が入り続けるリスクがあります。
そして既存住宅では、その“見えない内部”こそが本当の判断材料になることがあります。
完成後には見えなくなる部分ほど、本当の判断材料になります

現場では、
・どこから水が入ったのか
・どこで滞留したのか
・どこまで進行しているのか
・構造へどこまで影響しているのか
を、一つずつ確認しながら整理していきます。
これは写真だけでは断定できません。
実際には、
・木の傷み方
・湿り方
・腐朽方向
・シロアリの動き
・周辺納まり
・後施工の痕跡
などを、現地で確認しながら総合的に判断していきます。
👉 現場は生ものです。
だからこそ、ネット検索や一般論だけでは整理しきれないケースがあります。
【一度、立ち止まって考えてみてください】
見た目だけでリフォームを決めると、不要な工事で大きな出費につながることがあります。
ネットで調べすぎて、かえって不安になっていませんか。
👉 「まだ大丈夫」と思っている段階が、一番判断を間違えやすいタイミングです。
👉 数万円の確認で、数十万〜数百万円の工事が止まるケースもあります。
👉 大切なのは、情報を増やすことではなく、壊す前に、今の状態を正しく判断することです。
なぜ住宅判断に「現役大工の視点」が必要なのか
今回の現場のように、図面だけでは分からない「水の回り方」や「施工順番による劣化」を見抜くには、実際に現場で木を触ってきた施工者目線の一次情報が必要です。
完成後には見えなくなる下地。後から隠れてしまう納まり。施工時にしか分からない違和感。そうした情報を積み重ねているからこそ、「どこを疑うべきか」を絞ることができます。
なぜ住宅判断に、単なる表面確認ではなく「現役大工の視点」が必要なのか。
その理由はこちらの記事で詳しく整理しています。
まとめ
「まだ大丈夫」が、一番判断を止めやすい
今回の現場では、
・水を抱える構造
・コーキング依存
・長期含水
・木部腐朽
・シロアリ被害
が、長い時間をかけて進行していました。
ですが、最初からここまで壊れていたわけではありません。
「まだ大丈夫」
その言葉を繰り返しているうちに、少しずつ内部で進行していったのです。
住宅で本当に危ないのは、「壊れていること」だけではありません。
・誰へ頼めばいいか分からない
・部分ごとにバラバラへ依頼する
・全体を見る人がいない
・比較しすぎて判断が止まる
そうやって、「住宅の判断」が止まってしまうことの方が危険なケースがあります。
もしあなたが今、知り合いの塗装屋さんや部分工事だけでリフォームを進めようとしているなら、一度立ち止まって考えてみてください。
住宅はすべて繋がっています。
部分だけを直しても、全体の構造や水の流れを整理できていなければ、見えない場所で問題が進行していることがあります。
だから真HMSでは、工事を売る前に、
・今どこまで進行しているのか
・本当に必要な工事はどこまでなのか
・なぜそうなったのか
・どこを優先すべきなのか
を整理することを大切にしています。
その工事、本当に必要ですか?
リフォームの前にやるべきことは、表面を綺麗にする前に、まず建物全体を中立に確認し、お客様自身が「住宅の判断」を取り戻すことです。
既存住宅状況調査(住宅診断)についてはこちらをご覧ください。



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